こんにちは。
QUIsでは豆腐の発信活動やガストロノミーツーリズムに関連したイベント開催などを行っています、インターン生の家中です。
9月2日から4日の3日間、大豆・豆腐やガストロノミーツーリズムの視点で、北海道の十勝・旭川周辺に視察に行ってきました!
見つけた面白いものや人々についてレポートします。
食にかかわる方々との出会い
CALMEさんにてお食事会
芽室町にあるイタリアン&フレンチレストラン「CALME」にて、十勝のみなさんと食事会をしました。
十勝農業改良普及センターの坂本祥一さん、オーガニック農家のSAWAYAMA FARM澤山あずささん、北海道エリアのクリエイティブをサポートするドット道東の野澤一盛さん、鶴居村にあるレストラン・ハートンツリーのシェフ服部大地さん、オーガニックで牛を育てる宮地牧場の宮地晋也さんと出会うことができました。
「オーガニックを楽しく伝えていきたい」「2年で全面オーガニック栽培に移行したい」「十勝で活躍する場を提供・サポートしたい」など、十勝や農業を盛り上げようとしているみなさんの思いや活動を知ることができました。
今回は一緒に食事をしたSAWAYAMA FARMさん、宮地牧場さんの野菜とお肉を使った料理をいただきました。
CALMEのシェフが、丁寧に、野菜やお肉の特徴などを説明してくださいました。見た目もとにかく綺麗だったので、写真とともに紹介します。
SAWAYAMA FARMさんの野菜を使ったさわらのプレートです。
ソースまで野菜を使い、ホワイトコーンなども添えて〓
上に載っているのはSAWAYAMA FARMさんのパセリです。パセリを振りかける際は細かく刻んであるのが通常ですが、SAWAYAMA FARMさんのパセリの香りを感じられるように粗めに刻んでいるのだそうです。実際に、イカ墨の味の中でもパセリの存在を感じることができました。
宮地牧場のお肉と、SAWAYAMA FARMさんのパプリカを使ったソースもいただきました!
このお肉はアスリート並みに筋肉が発達した牛・部位だそうで、細かく切って一口ずつ食べられるようにソースも分けて置いているそうです。
見た目は柔らかそうですが、アスリート並みのお肉は確かに固く、咀嚼するのに時間がかかりました。かたいからこそ、噛めば噛むほど味が出てきました。
SAWAYAMA FARMさんのパプリカソースも3種類用意していただき、それぞれクリーミーになっていたりトマトが入っていたりと味わいが違い楽しかったです。
今回料理を作ってくださったCALMEのシェフは、野菜をそのまま載せたりソースにしたりと、様々な姿に変身させて提供してくださいました。
生きることの根本は食べること、という考えのもと、食べることに関心をもったり、食べることで健康に幸せになってもらうために、レストランとして、自分の手の届く範囲の人を幸せにしたいという思いがあると語っていました。
こだわっている農家の方がいるだけではなく、素材そのもののの味を大切にし、楽しめるお店があることも食をより楽しむうえで重要な要素なのだと実感しました。
そして、シェフは毎回、どのような食材を使っていてどのように調理したのかなどを詳細に説明してくださいました。普段私はレストランに行っても、どこで摂れた食材で、誰がどのように調理しているのかといった背景を知らないまま食べていがちです。知る機会も少ないと思います。
シェフのおっしゃっていたように、「生きることの根本は食べること」であるから、自分が何を食べているのかを知る必要があるし、食べ物の背景を知ると食がもっと楽しくなります。ガストロノミーツーリズムや豆腐の発信活動の中でも、作っている人をはじめ、食材の背景を知ることをもっとできないかと考えていますが、農家とレストラン、レストランと私たちがもっと密接に関わり、コミュニケーションを取ることがその第一歩かもしれません。
SAWAYAMA FARMさん
SAWAYAMA FARMさんは、オーガニックでの農業にこだわって育てられている農家さんです。
大豆もたくさんの種類を育てられていて、今回は黒千石大豆と黒大豆、ゆきしずかの3種類を見せていただきました。
大豆によって大きさや葉の色もかなり違いました。
澤山さんは今後の目標として以下の3つを掲げられています。
- 全面オーガニックの農業に移行
- 共育
- コミュニティ
1. 全面オーガニック移行
SAWAYAMA FARMさんは全面積38haのうちの20haをオーガニックで栽培されていて、全面オーガニックへの移行をあと2年で実現できるよう進めているそうです。さらに、オーガニックで育てる農家を増やすべく、学生インターンの受け入れも計画しているとおっしゃっていました。
オーガニックで栽培する農家の課題として、大きな機会を農薬を使う農家と共有できないという大きなハードルがあるといいます。
そこで、自らがオーガニック農家で収益を得るというロールモデルなることや、オーガニック農家を増やすことができればさらにハードルが下がるなどSAWAYAMA FARMさんが行おうとしている取り組みは、農家を志す多くの人にとっても、そしえて消費者の私たちにとっても行動のきっかけを作ってくれるものだと実感しました。
2. 共育, 3. コミュニティ
教育ではなく「共育」という、地域で共に育て、共に育んでいくという考えのもと、コミュニティを運営されています。陸稲という、水田ではない米の栽培を地域の人々の中で行う「コメニティ」で、生産の背景を知り、行動に移すところまで共に学んでいきたいという思いが込められています。
他にも、エコビレッジという「食糧など、必要なものをなるべくコミュニティ内で生産・消費する人たちの集まり」(北海道エコビレッジ推進プロジェクトHPより)
欧州でエコビレッジの視察をされていた坂本純科さんを招き、実際に作る構想ができているのだそうです。
私も北欧・デンマークに留学していた経験があり、デンマークのパーマカルチャーに関して学んだり、エコビレッジの視察をしてきました。そこでも、SAWAYAMA FARMさんが大切にしている共に学んだり共有することが大切にされており、お金の価値について考えさせられる仕組み(廃材で家を作る、要らなくなった服を捨てずに共有するなど)がありました。
オーガニックを進めていくこととコミュニティの助け合いの密接な関係性について考えさせられる機会となりました。
最後に、北海道の第一次産業の課題として、原料生産・出荷がメインになるため、単価が低いという点を指摘されていました。
確かに、大豆の産地である一方、豆腐屋さんが少ないことが気になっていました。しかし、SAWAYAMA FARMさんはじめ、食事会で出会ったみなさんによるサポートや十勝の魅力発信などのお話を間近で聞き、北海道のお豆腐屋さんについてももっと発信していきたいと思いました。
宮地牧場さん
宮地牧場さんも、オーガニックでグラスフェッド牛を育てられている農家さんです。
牛といえば野原に放牧されているイメージをもたれがちですが、農業産業振興機構によると、実は放牧されているのは全国の総飼育頭数の約2割だそうです。そのうち約9割が北海道の農家だそうですが、その北海道でも放牧されている牛を見ることは稀でした。
宮地牧場さんはそのような、レアな放牧をされている農家です。
放牧の様子を見せていただきましたが、牛たちは人間に慣れているようで、近づいて撫でても怖がらずに落ち着いて草を食べている様子がなんだかおもしろかったです。
宮地さんの思いとして、動物や自然にできる限り負荷をかけない酪農を目指しているそうです。
牛たちに名前をつけて育てられているところや、牛たちのまったりとした様子を見て、本当に愛情をこめて育てられているのだなと実感しました。
グラスフェッドオーガニック牛乳をしぼりたてでいただきました。
しぼりたての牛乳というと、濃い牛乳をイメージするかもしれませんが、こちらの牛乳は濃すぎずすっきりしています。
宮地さん曰く、優しい味であることで体への吸収も良いのだそうです。
宮地さんのグラスフェッドバターでおすすめの食べ方を紹介していただきました。
ふかしたさつまいもの上にバターを載せて食べるというシンプルな食べ方です。
たっぷりのったバターですが、溶けるのが早く口の中ですぐになくなってしまいます。シンプルなおやつですがおやつにしてはもったいないほど美味しく、バターの味も楽しめる美味しい食べ方でした。
平田こうじ店さん
東川町にある平田こうじ店さんで塩こうじとみそを購入しました。
平田さんによると、東川町は大雪山の伏流水があるので水資源が豊富で、なんと水道代がただなのだそうです。その豊富な水資源のため、豆腐やみそなどの生産が豊富だそうです。
平田こうじ店さんはそのほかにも、こうじを使った石鹸やバームなども作って道の駅などで売られています。
十勝・旭川のお豆腐事情
豆資料館
道の駅中札内にある豆資料館は、「大豆研究家・豆畑拓男」という架空の人物の研究所兼家という設定の資料館です。
もともとは旧馬鈴薯原原種農場の事務所として使われていた場所だといいますが、現在は豆の産地・十勝ならではの豆資料館として、豆の種類や北海道での生産量、各豆の調理方法など、資料が充実していて豆腐に関する情報を発信する身としてたいへん勉強になりました。
大豆に限定せず、大量の豆の展示や調理例の食品サンプルなどもあり、豆の奥深さを知ることができる施設でした。
平田とうふ店
旭川駅から車で40分ほどの場所にある平田とうふ店は、地元で人気のお豆腐屋さんです。
大雪山の伏流水と道産の大豆を使ったこだわりのお豆腐や、パンやお菓子、ビールに至るまで、地元のお店とコラボして商品を作っているところも素敵なお店です。
お豆腐もたくさんの種類があるようでしたが、木綿豆腐と寄せ豆腐を購入しました。
木綿豆腐は昔ながらの水槽に入っている豆腐で、大きなパックに入れていただきました。
寄せ豆腐はとにかくなめらかで、大豆の味を感じられるお豆腐でした。
平田とうふ店さんが経営する揚げ・スイーツ専門店「揚福」でとうふチーズタルト、とうふ生ドーナツ、とうふすり身揚げを購入しました。
どの食べ物も美味しかったですが、特に美味しかったのがすり身揚げです。噛めば噛むほど油がたっぷり出てきて、甘みも感じました。ぜひ試してみてほしいです。
観光資源
六花の森
六花亭の包装紙に描かれている十勝六花(エゾリンドウ、ハマナシ、オオバエナノエンレイソウ、カタクリ、エドリュウキンカ、シラネアオイー)を中心としたガーデン、包装紙を描いた画家の坂本直行さんの作品などが展示されている、六花の森に行ってきました。
お菓子のお店の六花亭ですが、ガーデン、アート、自然など、食以外の要素ももち、それらを見学できる施設まで展開するなど、たくさんの要素をもっているのだなと改めて実感しました。
六花の森の出口には食堂があり、食事やここでしか食べられないデザートなどを楽しめました。
せっかくなので、7種類の豆を使用したスープセットをいただきました。
7種類の豆は大きさも色もバラエティに富んでいて、トマト系のスープとの相性が抜群でした。
自家製パンも美味しかったです!
六花亭の定番お菓子、「マルセイバターサンド」のできたてがこちらでは食べることができます。
普段購入できるバターサンドは、ビスケットがクリームに溶けてしんなりした食感ですが、ここではビスケットがまだサクサクした状態のバターサンドを食べることができます。
サクサクいしたビスケットもクリームと合っていて美味しかったです。
ここでしか食べることができないできたてのバターサンドはぜひ試していただきたいです!
キトウシの森きとろん
東川町にある「キトウシの森きとろん」は、温浴複合リゾートとして、キャンプサイトとしても人気の観光スポットです。
「キトウシ」とはアイヌ語のこの土地の地名だそうです。他にも、施設内にあるコテージは「ケビン」と呼ばれるなど、アイヌ語が多様されています。
また、温泉やサウナなどのある施設は隈研吾さんがデザインされているそうです。
登っていくと展望台があり、展望台から東川町の田園風景を眺めることができ、とても気持ち良かったです。
旭岳
大雪山とも呼ばれる旭岳は、北海道で一番標高の高い山です。
コースを選べば、軽装でも登ることができ、豊かな植物や美味しい空気も楽しめます。歩き始めてすぐに旭岳を見ることができ、展望スポットも3つほどあります。
湖に映る旭岳の姿がとても綺麗だったので写真を撮りました。
赤みがかっていて風に削り取られたように角ばった旭岳、とてもかっこよかったです。豊かな植生や新鮮な空気、そして雄大な山と、自然を感じられる旭岳、今度は登山コースで登ってみたいです。
川村カ子ト記念館
東川町にある「川村カ子ト記念館」は、東川町で唯一の私立のアイヌ関連記念館です。
記念館の周辺はもともとはアイヌ民族の方々が住んでいた場所だそうで、当時のアイヌ民家を再現した家も敷地内に建っています。
川村カ子トさんという、測量士としても活躍したアイヌの方の人生を中心に、当時アイヌ民族の方々が使っていた着物や武器、食べていた動物などの展示のほか、入れ墨などの伝統なども知ることができます。
また、明治以降の同化政策の中で、アイヌの方が伝統を禁止され、差別を受けてきたという歴史も詳細に語られています。アイヌ語がそのまま使われる地名の多い北海道ですが、一方で悲しい歴史もあるということを改めて認識し、知ること・学ぶことの必要性を実感しました。訪問時に上映されていた「カムイのうた」は、衣装や化粧でアイヌの伝統を見ることができる他、差別の歴史も多く含んでおり、思わず見入ってしまいました。
言葉で「同化政策」と知ってはいても、実際に当事者の生活がどのように変わり、どのように差別されたのかは、想像するだけでは見えてこないものがあります。観光は楽しむことも大事ですが、同時にその土地だからこそ分かる学びも大切にするべきだと思いました。
館内はかなりアットホームな雰囲気で、アイヌ文化を広める活動などをされている方やルーツのある方も集まることができる場所であり、ただ見るだけではなくお話することができたのもとても良かったです。
視察の感想
今回のテーマのひとつに大豆・豆腐があったのですが、十勝・旭川には豆腐屋さんは多くありませんでした。
大豆の産地や自然が豊かで水も綺麗な場所のイメージがあったので、豆腐屋さんも多いのだろうと考えていましたが実際には少なく、驚きました。
人口密度や、原料を売り、加工する過程が道内で行われることが少ないといった背景があるのだと複数の方から伺いましたが、やはり現地で生産するお豆腐をもっと食べてみたいと思いました。
一方で、営業しているお豆腐屋さんは、道産の大豆を使っていることが多く、地元のお店とコラボして大きな存在感をもっていました。北海道の美味しい大豆で作ったお豆腐がもっと広まり、お豆腐屋さんが増えたら嬉しいです。
また、全体を通して、リトリートや生活スタイル・消費スタイルについて考え直すきっかけが十勝・旭川にはあるのではないかと感じました。
普通に観光していると、農家の方と触れ合ったり、レストランの方の思いを聞いたり、歴史に関して詳しい方から話を聞いたりすることはなかなかできません。
違う生活スタイルを体験してみる、食についてじっくり考えてみるといった機会を、今後作っていけたらと思います。
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